決算分析

【決算分析】INFORICH(9338)”買い”か”待ち”か?売上増でも利益減のナゾと将来性を解剖

INFORICH(9338)"買い"か"待ち"か?売上増でも利益減のナゾと将来性を解剖
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街中でスマホの充電が切れそうな時、もはやインフラとも言える「ChargeSPOT」。このサービスを運営する株式会社INFORICH(インフォリッチ)の最新決算が発表されました。

内容は、売上が36.5%も伸びたのに、最終的な利益は41.4%も減少したというもの 。

この数字を見て、「絶好調なの?それとも何か問題が?」と首をかしげた投資家も多いはず。この記事では、

INFORICHの決算を徹底的に読み解き、「今、何が起きているのか」「未来の成長性はどこにあるのか」を分かりやすく解説します。

前回決算時の記事はこちら

https://www.investor-lab.jp/blog/wp-admin/post.php?post=460&action=edit

ポジティブ材料:止まらない成長と、力強い「稼ぐ力」

まず、INFORICHの事業の核が非常に強いことを確認しましょう。

  • 売上はロケット成長が継続中
    • 売上高は62.5億円と、前年から+36.5%という高い成長率を維持しています 。これはサービスの利用者が順調に増えている力強い証拠です。
  • 本業で稼いだ現金は19.6億円!
    • 利益以上に重要なのが、会社が本業でどれだけ現金を生み出したかを示す「営業キャッシュフロー」。これが19.6億円のプラスと、前年の14.0億円から大幅に増加しました 。
  • 成長投資を自力で賄う「フリーキャッシュフロー」
    • 本業の稼ぎ(営業CF)から、事業拡大に必要な設備投資(バッテリースタンド取得など)を差し引いた「フリーキャッシュフロー」がプラス(約9億円)です。これは、外部からの借入だけに頼らず、自社の稼ぎで成長投資を賄えている健全な状態を示しています。

この「売上成長」と「キャッシュ創出力」は、INFORICHの事業基盤が非常に強固であることを物語っています。

利益4割減のナゾ:犯人は「為替」と「未来への投資」

では、なぜこれほど好調なのに最終利益は41.4%も減ってしまったのでしょうか ?理由は大きく2つです。

  1. 最大の犯人は「為替差損」 INFORICHは海外でも事業を展開しており、為替レートの変動が利益に直結します。
    • 昨年同期:1.7億円の為替差益(追い風)がありました 。
    • 今期:1.0億円の為替差損(逆風)が発生しました 。 この為替によるブレが、本業の利益を大きく削ってしまったのです。
  2. 未来のための「先行投資」 事業を世界に広げ、新しいサービスを育てるための人件費や広告宣伝費(販管費)も増えています 。これにより、本業の儲けを示す営業利益率は8.2%と、前年の8.9%からわずかに低下しました 。これは、未来の成長のために必要なコストと言えます。

会社の体力は?財務の健全性をチェック

借金は増えていないか、会社の財務は安全なのでしょうか?

1. 財務諸表分析(定量分析)

サマリー: 売上は高成長を維持し、本業のキャッシュ創出力は力強い。しかし、為替変動が利益を圧迫しており、財務レバレッジは高まっている。成長のための積極投資フェーズが継続している。

(1) 収益性分析

売上高は前年同期比で+36.5%と高い成長を遂げているものの、為替差損の影響で経常利益、純利益は大幅な減益となった 。ROE、ROAは純利益の減少に伴い悪化している。

収益性指標2025年12月期 2Q2024年12月期 2Q考察
売上高成長率+36.5% +39.4% 高い成長率を維持。
売上総利益率77.6%76.5%原価コントロールは改善傾向。
営業利益率8.2%8.9%増収効果を販管費の増加が上回り、微減。
経常利益率5.9%12.2%為替差損(1.06億円)が大きく影響し、大幅に悪化
純利益率3.9%9.2%経常利益の減少がそのまま影響。
ROE (自己資本利益率)※8.5%18.0%純利益の減少と自己資本の増加により大幅に低下。
ROA (総資産利益率)※2.5%純利益の減少と資産の増加により低下。

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※ROE、ROAは中間純利益と期末・期首平均の純資産・総資産を元に年率換算して算出(参考値)。

(2) 安全性分析

自己資本比率は前期末から横ばいで、一定の安定性は維持している。しかし、事業拡大のための借入が増加しており、D/Eレシオは上昇。財務レバレッジを活用した経営を行っている。

安全性指標2025年6月末2024年12月末考察
流動比率128.2% 98.7% 短期借入金の返済が進み、短期的な支払能力は改善。
自己資本比率28.8% 28.1% 事業拡大で総資産が増加する中、横ばいを維持。
D/Eレシオ (有利子負債/自己資本)1.74倍1.67倍設備投資のための長期借入金が増加し、レバレッジは上昇。

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※有利子負債 = 短期借入金 + 1年内返済予定の長期借入金 + 長期借入金 + リース債務

(3) 効率性分析

資産の増加ペースに対し、売上(年率換算)が追いついておらず、総資産回転率は低下。成長のための先行投資(バッテリースタンド等)が資産を押し上げている段階と評価できる。

効率性指標2025年12月期 2Q2024年12月期考察
総資産回転率 ※0.63回資産効率は低下。今後の売上拡大による改善に期待。
棚卸資産回転日数 ※10.4日バッテリー等を棚卸資産として計上。効率的な管理が求められる。

※年率換算した売上高・売上原価を用いて算出。

(4) キャッシュフロー(CF)分析

「営業CFで稼ぎ、その範囲を超える積極的な投資を財務CF(借入)で賄う」という、典型的な成長企業のCFパターンを示している。

  • 営業CF: 19.6億円のプラス 。税前純利益(3.1億円)を大幅に上回っており、本業のキャッシュ創出力は非常に強い 。これは減価償却費(8.4億円)などの非現金支出費用が大きいため 。
  • 投資CF: 16.8億円のマイナス 。主にモバイルバッテリーやスタンド等の有形固定資産取得(10.6億円)によるもので、事業拡大のための健全な投資 。
  • 財務CF: 12.4億円のプラス 。長期借入(32.3億円)などで資金調達し、短期借入金の返済や投資資金を賄っている 。
  • フリーキャッシュフロー(FCF): 営業CFから投資CF(有形固定資産の取得)を差し引いたFCFは +9.0億円 (19.6億円 – 10.6億円)とプラスを確保。本業の稼ぎだけで成長投資を賄えている点は高く評価できる。
  • 自己資本比率は28.8%と、前期末の28.1%から横ばいを維持しており、安定性は保たれています 。
  • 借金の多さを示すD/Eレシオは1.74倍とやや高めですが、これは事業拡大のための前向きな借入が中心です。
  • 手元には103億円を超える潤沢な現金があり 、当面の支払能力や投資余力に不安は小さいでしょう。

INFORICHの未来予想図:3つの事業の現在地と可能性

INFORICHの将来は、3つの事業セグメントにかかっています。

  1. ChargeSPOT国内(利益の柱)
    • 売上の7割以上を占め、9.6億円の利益を生み出す大黒柱です 。今後も安定した収益源として期待されます。
  2. ChargeSPOT海外(成長への投資)
    • 売上は伸びていますが、中国市場での競争激化などもあり、まだ2.4億円の赤字です 。グローバル展開のための投資フェーズと位置づけられています。
  3. プラットフォーム事業(未来の可能性)
    • 広告事業やファンが応援広告を出せる「CheerSPOT」 、ベビーケアルーム「mamaro」 など、未来の収益源を目指す事業です。まだ1.3億円の赤字ですが 、最も大きな成長ポテンシャルを秘めています。

総合評価

以上の分析を踏まえ、インベスターラボの視点から見たINFORICHの評価はこちらです。

  • 強気(Bullish)になれる点:
    • 国内事業の圧倒的な収益性と高い市場シェア。
    • 営業キャッシュフローで見る力強い本業の稼ぐ力。
    • プラットフォーム事業が花開いた時の爆発的な成長期待。
  • 弱気(Bearish)にならざるを得ない点:
    • 為替変動に利益が左右される不安定さ。
    • 赤字が続く海外・新規事業の投資回収がいつになるかという不透明感。
    • 通期業績予想に対する利益の進捗率が低いこと 。
  • (1) 投資魅力
    • 高い成長ポテンシャル: 国内外で市場を拡大しており、売上高は+36.5%と高い成長を続けている 。特に、安定して利益を生み出す国内事業が基盤として確立されている点は魅力的。
    • 強力なキャッシュ創出力: 本業の稼ぎである営業CFは19.6億円と好調で 、成長投資を賄うだけの体力が備わっている。FCFがプラスである点も高く評価できる。
    • プラットフォーム事業の将来性: ChargeSPOTで築いたアセット(設置場所、ユーザー基盤)を活用したプラットフォーム事業は、将来的に大きな収益の柱となる可能性を秘めている 。
  • 短期的なカタリスト(株価材料)と中長期的な成長ドライバー
    • 短期的カタリスト:
      • 人流の回復・活発化(旅行、イベント等)による国内レンタル数のさらなる増加。6月には過去最高の日次レンタル数を記録 。
      • プラットフォーム事業における大型広告案件の獲得や、「CheerSPOT」での話題性のあるキャンペーンの成功 。
    • 中長期的成長ドライバー:
      • 海外事業(特に中国以外のアジア地域)の黒字化と収益貢献。
      • プラットフォーム事業の収益化と、第2、第3の柱への成長。
      • リテールメディア広告市場の成長という追い風 。
  • 考えられる最大のリスクシナリオ
    • 「国内事業の失速と海外・新規事業の投資回収の遅延」 競合の台頭や景気後退により、収益源である国内事業の成長が鈍化・頭打ちとなる。同時に、海外事業では競争激化から抜け出せず赤字が継続、プラットフォーム事業もマネタイズが進まない。結果として、売上成長が鈍化する一方で、積極投資による販管費や減価償却費の負担だけが重くのしかかり、全社的な営業赤字に転落。財務レバレッジが高いだけに、金利上昇が追い打ちをかけ、資金繰りが悪化するシナリオ。

【未来への視点】 成長ストーリーは非常に魅力的ですが、その成長が安定した利益に結びつくには、まだ時間が必要です。

結論: 株式会社INFORICHは、高い成長性と強力なキャッシュ創出力を併せ持つ魅力的なグロース企業である。しかし、為替変動への脆弱性、利益率の低下、そして海外・新規事業という「将来への投資」がまだ収益貢献に至っていない点を考慮すると、不確実性も大きい。

本業の足元は固まっているものの、利益面での懸念が払拭されるまでは、株価の上値が重くなる可能性もある。したがって、現時点での投資判断は「中立(Neutral)」とし、今後の四半期決算で利益率の改善海外・プラットフォーム事業の赤字縮小が確認できるかを注視したい。

参考:INFORICH IRページ

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Dr.カブアガール
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Data Analytics Specialist
金融データ分析メディア「インベスター・ラボ」所長 兼 データアナリティクススペシャリスト。 日々変化する株式市場の海の中から、データという羅針盤を手に「隠れた成長企業」という宝の島を探し求める探求者。複雑な財務データや市場トレンドを分かりやすく紐解き、個人投資家の皆様の意思決定をサポートすることを使命に燃えている。チョコに目がない
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