【徹底解説】三越伊勢丹26年3月期1Q決算:海外売上急減の真相と「個客業」戦略の成果
2025年8月8日に発表された三越伊勢丹ホールディングス(以下、三越伊勢丹)の2026年3月期第1四半期決算は、前年比で売上・営業利益が減少する一方、当期純利益は大幅な増益となりました。この結果の背景には何があるのでしょうか。
本記事では、決算短信と決算説明資料を徹底的に読み解き、決算の数字の裏に隠された「海外売上急減の真相」と、今後の成長を左右する「個客業」戦略の成果について、ウェブメディアの記事風に分かりやすく解説します。
目次
決算ハイライト:売上減益も、純利益は大幅増益
まずは、連結経営成績の全体像を見ていきましょう。
項目 | 2026年3月期1Q | 2025年3月期1Q | 前年差 | 増減率 |
---|---|---|---|---|
売上高 | 1,241億円 | 1,296億円 | ▲55億円 | ▲4.2% |
営業利益 | 156億円 | 188億円 | ▲32億円 | ▲17.1% |
親会社株主に帰属する四半期純利益 | 188億円 | 137億円 | +51億円 | +37.5% |
売上高と営業利益は前年同期比で減少しました。しかし、親会社株主に帰属する四半期純利益は37.5%増と大きく伸びています。
この純利益の増加は、本業の成果ではありません。決算説明資料によると、これは持分法適用関連会社である新光三越百貨の株式の一部売却に伴う特別利益(106億円)を計上したことが主な要因です。
顧客セグメント別分析:国内好調、海外は特殊要因の反動
売上減少の背景を理解するために、国内顧客と海外顧客の売上動向を比較することが不可欠です。
① 国内顧客売上高:戦略が奏功し堅調に推移
国内顧客の売上高は、前年を上回る堅調な推移を見せました。
- 「個客業」戦略の成果: 三越伊勢丹は「個客業」へのビジネスモデル変革を掲げており、その戦略が数字に表れています。入店客数が前年並みである一方、顧客との関係性強化により客単価は105%に上昇しました。
- 高額購買顧客が成長を牽引: 年間300万円以上購買する顧客の売上高が108%増、1,000万円以上購買する顧客の売上高が114%増となるなど、高額購買層との関係強化が成功しています。
- 「ベーシックカード」が顧客基盤を拡大: 年会費無料の「エムアイカード ベーシック」の新規導入が奏功し、アプリ会員数が大幅に伸長。これにより、顧客との「識別化」が進み、強固な顧客基盤の構築に繋がっています。
② 海外顧客売上高:前年の特殊要因が影響
一方、海外顧客の売上高は前年比で大きく減少しました。これは、前年が極めて好調だったことの反動が主な原因です。
- 前年(25年3月期)の特殊要因:
- 為替の影響: 前年は急速な円安が進行し、海外顧客にとって日本での購買が非常に割安な状態でした。
- 高額品の値上げ: 高額なラグジュアリーブランドや宝飾品の値上げが集中したため、駆け込み需要が発生しました。
これらの特殊要因が重なったことで、前年第1四半期は異例の売上を記録しました。今期はこれらの要因が落ち着いたため、見かけ上は大幅な減少となりましたが、前々年(24年3月期)と比較すると依然として高い水準を維持しています。決算説明会では、7月後半から客数を中心に改善の兆しが見られ、8月以降は正常化すると想定していることが語られました。
今後の戦略:国内・海外の「個客業」をさらに推進
三越伊勢丹は、この決算結果を受けても通期計画を変更せず、営業利益780億円の達成を目指します。その鍵となるのは、以下の成長戦略です。
- 国内顧客へのパーソナル提案強化: 「ベーシックカード」による顧客の「識別化」をさらに進め、購買データを活用したパーソナルな提案を強化。外商担当者による「アテンド型営業」のコンテンツを拡充し、高額購買層のロイヤリティ向上を図ります。
- 海外顧客向けCRM基盤の構築: 海外顧客向けアプリ「MITSUKOSHI ISETAN JAPAN」の登録者数をさらに拡大し、CRM(顧客関係管理)基盤を整備。購買履歴に基づいたパーソナルな情報提供を来年1月より前倒しで開始します。また、新設された「海外外商部」が、在日・訪日顧客に向けた「個」のマーケティングを本格化させます。
- 機動的な経費コントロール: 物価上昇による経費増が続く中、計画を上回るペースで経費構造改革を推進しています。売上水準に応じて機動的な経費コントロールを行い、収益性の確保を目指します。
まとめ:未来への投資とリスク
今四半期の三越伊勢丹は、海外顧客の売上が一時的に減少したものの、その背景には前年の特殊要因があり、実態としては国内顧客の「個客業」戦略が着実に成果を上げています。
今後の注目点は、海外顧客の売上が回復基調に乗るか、そして国内で強化している「個客業」戦略が、売上と利益の安定的な成長へと繋がるかです。金融事業や不動産事業、その他の事業も堅調な推移を見せており、多角的な事業ポートフォリオを持つ強みも活かされています。
決算の数字は一見すると厳しい部分もありますが、その内訳を詳しく見ると、未来の成長に向けた着実な投資と戦略の成果が随所に表れていることが分かります。