銘柄分析

サイバーセキュリティ・DX関連8社の決算分析:成長著しい企業と今後の展望

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デジタルトランスフォーメーション(DX)の波と、それに伴うサイバーセキュリティ需要の高まりを受け、関連企業の業績が注目されています。今回は、2025年発表の決算短信(対象期間は各社で異なります)から、8社の成長性を分析し、今後の展望についてお届けします。

対象企業

  1. HENNGE株式会社 (4475)
  2. S&J株式会社 (5599)
  3. グローバルセキュリティエキスパート株式会社 (4417)
  4. 株式会社サイバーセキュリティクラウド (4493)
  5. デジタル・インフォメーション・テクノロジー株式会社 (3916)
  6. 株式会社ブロードバンドセキュリティ (4398)
  7. 株式会社網屋 (4258)
  8. 株式会社FFRIセキュリティ (3692)

各社の成長率推移

以下の表は、各社の直近決算短信における売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益(または四半期純利益)の成長率をまとめたものです。

会社名 (コード)決算期/期間売上高成長率営業利益成長率経常利益成長率純利益成長率
HENNGE (4475)2025年9月期 第2四半期+33.6%+72.6%+83.3%+87.9%
S&J (5599)2025年3月期 通期+20.6%+20.5%+32.6%+41.4%
グローバルセキュリティエキスパート (4417)2025年3月期 通期N/A ※1N/A ※1N/A ※1N/A ※1
サイバーセキュリティクラウド (4493)2025年12月期 第1四半期+24.4%-23.6%-38.7%-30.9%
デジタル・インフォメーション・テクノロジー (3916)2025年6月期 第3四半期+23.2%+34.1%+36.4%+34.7%
ブロードバンドセキュリティ (4398)2025年6月期 第3四半期-5.3%-52.9%-56.2%-59.5%
網屋 (4258)2025年12月期 第1四半期+14.5%+24.5%+15.8%+16.3%
FFRIセキュリティ (3692)2025年3月期 通期+24.2%+64.1%+62.8%+59.0%

※1:グローバルセキュリティエキスパート社は2025年3月期より連結財務諸表を作成しているため、対前期増減率は記載されていません。参考として、売上高88.01億円、営業利益16.15億円、経常利益15.62億円、親会社株主に帰属する当期純利益10.10億円を計上しています。
※ 各社の成長率は、それぞれの決算短信に記載された対前年同四半期増減率または対前期増減率です。

サイバーセキュリティ関連企業8社の決算成長率の結果からは、サイバーセキュリティ市場は全体的に成長傾向にあり、多くの企業で2桁増収が見られます。HENNGEやFFRIセキュリティは収益性の高い成長を遂げ、デジタル・インフォメーション・テクノロジーも好調です。一方で、先行投資フェーズにある企業や戦略転換中の企業も見られ、成長にはばらつきがあります。


各社業績成長率の概要

また、各社の決算発表に基づいた一般的な成長傾向や特徴、公表されている情報を中心に記述します。

企業名直近の主な成長ドライバーや特徴 (決算短信より)
FFRIセキュリティサイバーセキュリティ事業、特に「セキュリティ製品」分野が好調に推移し、ナショナルセキュリティ・サービスも安全保障関連案件の需要拡大により伸長。ソフトウェア開発・テスト事業は微減 。令和8年3月期は売上高40.2%増、営業利益11.9%増などを見込む
HENNGE主力の「HENNGE One」事業がARR(年間経常収益)10,378百万円(前年同期比+40.8%)と大幅に成長し、契約企業数、契約ユーザー数も増加 。2025年9月期通期では売上高30.1%増、営業利益72.4%~92.1%増を見込む
S&JSOCサービスが新規案件獲得により売上高21.7%増、コンサルティングサービスも不審メール訓練案件やインシデント対応で17.7%増と好調 。2026年3月期は売上高29.7%増、営業利益23.4%増などを見込む
グローバルセキュリティエキスパートサイバーセキュリティ人材育成やコンサルティング、脆弱性診断など幅広いサービスを提供。準大手・中堅・中小企業の旺盛なセキュリティ対策ニーズを捉え、業績を拡大 。2026年3月期は売上高25.0%増、営業利益36.2%増などを見込む
サイバーセキュリティクラウドパブリッククラウドWAF自動運用ツール「WafCharm」や「CloudFastener」の受注が好調。2024年10月に連結子会社化したジェネレーティブテクノロジーの受託案件も寄与 。2025年12月期は売上高29.6%増、営業利益29.3%増を見込む
デジタル・インフォメーション・テクノロジービジネスソリューション事業(業務システム開発、運用サポート)、エンベデッドソリューション事業(組込みシステム開発、検証)、プロダクトソリューション事業(サイバーセキュリティ、業務効率化)がいずれも好調。M&A効果も寄与し大幅な増収増益 。2025年6月期通期では売上高20.7%増、営業利益19.6%増を見込む
ブロードバンドセキュリティセキュリティ監査・コンサルティングサービスが大きく伸長。一方で、脆弱性診断サービスおよび情報漏えいIT対策サービスはリソース配分の影響で減収。積極的な人財投資による費用増もあり、前年同期比では減益 。2025年6月期通期では売上高11.2%増、営業利益11.7%増を見込む
網屋データセキュリティ事業では主力の国産SIEM製品「ALog」がサブスクリプション化以降も順調に増加。ネットワークセキュリティ事業ではフルマネージドSASE「Verona」が企業のクラウドシフトやテレワークを背景に好調 。2025年12月期通期では売上高20.6%増、営業利益14.0%増を見込む

各社とも市場の追い風を受け、多くが2桁成長を見込んでいます。特にHENNGEはARRの高成長、FFRIは安全保障関連、グローバルセキュリティエキスパートは人材育成と中小企業開拓で高い伸びが期待されます。S&J、サイバーセキュリティクラウド、デジタル・インフォメーション・テクノロジー、網屋も各々の強みを活かし成長を目指し、ブロードバンドセキュリティは投資効果の発現が鍵となりそうです。

成長の背景にあるもの

これらの企業の成長を支える主な要因は、以下のように整理できます。

  1. 旺盛なDX・クラウド需要:企業規模を問わず、業務効率化や競争力強化のためのDX投資が活発であり、クラウドサービスの利用拡大がセキュリティ需要を押し上げています。
  2. サイバー攻撃の高度化と脅威の増大:ランサムウェア攻撃や標的型攻撃など、サイバー攻撃は年々巧妙化・悪質化しており、対策の重要性が経営課題として認識されています。
  3. 法規制の強化と意識向上:個人情報保護法改正や各種ガイドラインの整備が進み、企業側のセキュリティ対策への意識と投資意欲が高まっています。
  4. サブスクリプションモデルへの移行:多くの企業がSaaS型やリカーリングレベニュー型のビジネスモデルを採用し、安定的な収益基盤を構築しつつあります。

今後の展望と注目ポイント

サイバーセキュリティ市場およびDX関連市場は、今後も高い成長が続くと予想されます。その中で、今回取り上げたような企業が持続的な成長を達成するためには、以下の点が重要となるでしょう。

  • 人材獲得と育成:高度な専門知識を持つセキュリティ人材の確保と育成は、業界全体の課題であり、企業の競争力を左右します。
  • 技術革新への対応:AIを活用した新たな攻撃手法や、量子コンピュータ時代を見据えたセキュリティ技術など、常に最新の技術トレンドをキャッチアップし、製品・サービスに反映していく必要があります。
  • M&A戦略:技術力強化や事業領域拡大のためのM&Aは、成長を加速させる有効な手段となり得ます。
  • グローバル展開:国内市場で確固たる地位を築いた後、成長余地の大きい海外市場への展開も視野に入ってくるでしょう。

厳しい状況の企業も – 再起への戦略に注目

一方で、株式会社サイバーセキュリティクラウド (4493)は売上増ながら利益面で苦戦、株式会社ブロードバンドセキュリティ (4398)は減収減益と、厳しい状況にある企業も見られます。サイバーセキュリティクラウド社はM&Aや先行投資の影響、ブロードバンドセキュリティ社は事業戦略の見直しなどが背景にあると考えられますが、これらの企業が今後どのような戦略で再成長を目指すのか、その動向も注視していく必要があります。

まとめ

サイバーセキュリティとDXは、現代社会の根幹を支える重要なテーマです。今回分析した企業は、それぞれの強みを活かしてこの成長市場に挑んでいます。投資家の皆様におかれては、各社の最新のIR情報を確認し、事業内容や成長戦略を深く理解した上で、ご自身の投資判断にお役立ていただければ幸いです。

※本記事は公開情報に基づき作成されており、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっては、ご自身の判断と責任において行うようにしてください。

出典一覧

グローバルセキュリティエキスパート株式会社

株式会社網屋

株式会社ブロードバンドセキュリティ

HENNGE株式会社

株式会社サイバーセキュリティクラウド

S&J株式会社

デジタル・インフォメーション・テクノロジー株式会社

株式会社FFRIセキュリティ

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Dr.カブアガール
Dr.カブアガール
Data Analytics Specialist
金融データ分析メディア「インベスター・ラボ」所長 兼 データアナリティクススペシャリスト。 日々変化する株式市場の海の中から、データという羅針盤を手に「隠れた成長企業」という宝の島を探し求める探求者。複雑な財務データや市場トレンドを分かりやすく紐解き、個人投資家の皆様の意思決定をサポートすることを使命に燃えている。チョコに目がない
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