決算分析

【決算分析】FFRIセキュリティ、国家安全保障を追い風に高成長軌道へ!中期計画で描く未来図とは?

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サイバーセキュリティ専業企業のFFRIセキュリティ(東証グロース:3692)が、2025年5月14日に令和7年3月期(2025年3月期)の決算を発表しました。売上高、各利益ともに大幅な成長を遂げ、特に国家安全保障分野での貢献が際立っています。本記事では、同社の好調な業績と財務状況を分析し、発表された中期経営計画から今後の成長戦略を読み解きます。

令和7年3月期 業績ハイライト:増収増益を達成、利益率も向上

FFRIセキュリティの当期(令和7年3月期)業績は、前期に引き続き力強い成長を示しました。

  • 売上高: 30億39百万円(前期比24.2%増)
  • 営業利益: 8億17百万円(前期比64.1%増)
  • 経常利益: 8億80百万円(前期比62.8%増)
  • 親会社株主に帰属する当期純利益: 6億87百万円(前期比59.0%増)

主力の「FFRI yarai」シリーズのOEM販売が好調だったことに加え、安全保障関連のセキュリティ・サービス案件が増加したことが増収に大きく貢献しました。エンジニアの待遇向上や採用強化によるコスト増はあったものの、売上高の伸びがこれを吸収し、大幅な増益を達成しています。

連結財務諸表から見る経営の傾向

1. 連結貸借対照表 (B/S)

勘定科目令和6年3月期 (前期末)令和7年3月期 (当期末)増減傾向
資産の部
流動資産2,799百万円3,234百万円+435百万円現金及び預金、売掛金、契約資産の増加が主因。
固定資産581百万円1,076百万円+495百万円サイバーリサーチコンソーシアムへの出資金(4.3億円)増が主。
総資産3,381百万円4,310百万円+929百万円積極的な事業展開と投資を反映。
負債の部
流動負債1,186百万円1,497百万円+311百万円セキュリティ製品の契約増による契約負債の増加(2.3億円)が主。
固定負債12百万円24百万円+12百万円リース債務増など。
負債合計1,199百万円1,521百万円+322百万円
純資産の部
株主資本2,181百万円2,788百万円+607百万円当期純利益の計上による利益剰余金の増加が主。
純資産合計2,181百万円2,788百万円+607百万円
負債純資産合計3,381百万円4,310百万円+929百万円
株式会社FFRIセキュリティ 令和7年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

資産は、事業拡大に伴う売掛金や契約資産の増加、そして将来への投資としての出資金により大幅に増加。負債も契約負債を中心に増加しましたが、純資産は利益剰余金の積み増しにより着実に増加しています。

2. 連結損益計算書 (P/L) および連結包括利益計算書
(業績ハイライトにて主要数値を記載済み)
売上高の増加に伴い売上総利益も15億42百万円から20億29百万円へ増加。販管費は人件費や採用費の増加で10億44百万円から12億12百万円に増えましたが、増収効果で営業利益は大幅に向上しています。

3. 連結キャッシュ・フロー計算書 (C/F)

区分令和6年3月期 (前期)令和7年3月期 (当期)増減傾向
営業活動によるCF390百万円641百万円+251百万円増益や契約負債の増加により大幅増。
投資活動によるCF△70百万円△477百万円-407百万円出資金の払込(4.3億円)が主因で支出増。
財務活動によるCF△0百万円 (95千円)△79百万円-79百万円配当金の支払いが主。
現金及び現金同等物の増減額319百万円84百万円-235百万円
現金及び現金同等物の期首残高1,758百万円2,078百万円
現金及び現金同等物の期末残高2,078百万円2,162百万円+84百万円投資を行いながらも、営業CFの好調さから現金等は増加。
株式会社FFRIセキュリティ 令和7年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

本業の儲けを示す営業CFは好調。その資金を積極的に将来への投資(出資金)に振り向けている構図が見て取れます。

経営指標分析:安全性・成長性・収益性ともに良好

指標名算出式令和6年3月期令和7年3月期評価
安全性分析
自己資本比率自己資本 / 総資産 × 10064.5%64.7%高水準で安定。財務基盤は強固。
流動比率流動資産 / 流動負債 × 100236.0%216.0%200%を超え、短期的な支払能力も問題なし。
成長性分析
売上高増加率(当期売上高 – 前期売上高) / 前期売上高 × 10024.2%高い成長率を維持。
総資産額3,381百万円4,310百万円事業拡大と投資により増加。
ROA (総資産利益率)当期純利益 / 平均総資産 × 10013.9% ※117.9%資産を効率的に活用し利益を上げている。向上傾向。
収益性分析
売上高営業利益率営業利益 / 売上高 × 10020.3%26.9%非常に高い収益性。前期より大幅に改善。
ROE (自己資本利益率)当期純利益 / 平均自己資本 × 10022.0% ※227.7%株主資本を効率的に活用。こちらも向上。
株式会社FFRIセキュリティ 令和7年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

※1 前期ROAは(前期純利益432百万円 / ((前期末総資産3,381百万円+前々期末総資産(仮に3,100百万円と推定)) / 2))として概算。
※2 前期ROEは(前期純利益432百万円 / ((前期末自己資本2,181百万円+前々期末自己資本(仮に1,749百万円と推定)) / 2))として概算。
(注:前々期末の正確な数値がないため、前期のROA,ROEは参考値。当期の数値は正確)

各種指標は総じて良好で、特に成長性と収益性の高さが目立ちます。

適正株価・PEGレシオの算出

  • 令和7年3月期 1株当たり当期純利益(EPS実績): 86.86円 (変更なし)
  • PER: 37.05倍(2025年5月16日15:30時点のスタンダード・グロース市場のサイバーセキュリティ関連銘柄の平均PER)

適正株価 = EPS × PER
= 86.86円 × 37.05
3218.163円

したがって、PERを37.05倍とした場合の適正株価は約3,218円となります。

PEGレシオの算出(PER 37.05倍)

  • PER: 37.05倍
  • EPS成長率: 約4.18%
    • (令和7年3月期EPS: 86.86円、令和8年3月期予想EPS: 90.49円)

PEGレシオ = PER / EPS成長率 (%)
= 37.05 / 4.1791388
≒ 8.865倍

したがって、PERを37.05倍とした場合のPEGレシオは約8.87倍となります。

  • PEGレシオは一般的に「1倍以下なら割安、1~2倍程度が適正、2倍を超えると割高」といった目安があります(ただし、これはあくまで目安であり、業種や市場環境によって異なります)。
  • 算出された約13.26倍という数値は、この一般的な目安からすると「著しく高い」と言えます。

算出結果まとめ

  • 適正株価(指定PER 55.4倍に基づく): 約3,218円
  • PEGレシオ(来期EPS成長率 約4.18%に基づく): 約8.87倍
  • 来期予想EPS成長率(約4.18%)のみを考慮したPEGレシオ(約13.26倍)は、一般的な基準から見て非常に高く、現時点の株価水準(37.05倍を前提)は来期の成長性に対して割高である可能性が高いと評価できます。

留意点

  • PERの妥当性: 37.05倍は、市場の期待感や同業他社の水準、過去のFFRIセキュリティのPERレンジなどと比較して評価する必要があります。このPERが高いか低いかによって、適正株価の評価も変わります。
  • EPS成長率の確度: PEGレシオは来期1期分の予想EPS成長率を基に算出しています。業績予想は未確定な要素を含むため、実際の成長率が予想と異なる場合、PEGレシオの評価も変動します。通常、PEGレシオは1倍~2倍程度が適正範囲とされることもありますが、FFRIセキュリティのようなグロース(成長)株は高い成長期待からPEGレシオも高めに出る傾向があります。今回の13.26倍という数値は、一般的な基準から見るとかなり高い水準であり、株価が将来の成長を大幅に織り込んでいるか、あるいは現時点での来期予想EPS成長率が市場の期待に比べて低い可能性を示唆しています。
  • 市場環境: 株価は企業業績だけでなく、マクロ経済環境や市場全体のセンチメントにも影響されます。

これらの算出結果は、あくまで特定の前提に基づいた参考値としてご活用ください。

今後の成長戦略:国家安全保障分野への注力と技術開発で飛躍へ

FFRIセキュリティは、中期経営計画(2026年3月期~2028年3月期、2025年5月14日修正版)において、「ナショナルセキュリティ・サービスを成長のドライバーとし、増収増益とする計画」 を掲げています。

1. 経済安全保障重要技術育成プログラム(K Program)への参画:
内閣府、文科省、経産省が推進するK Programに基づき、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)およびJST(科学技術振興機構)の研究開発プロジェクトに参画。「先進的サイバー防御機能・分析能力強化」や「不正機能の意図性評価に関する方法論整理及び評価ツールの開発」といった国家レベルの重要課題に取り組み、先端技術の研究開発を推進します。これは、同社の技術力向上と、将来的な国産セキュリティ製品・サービス創出の核となるでしょう。

2. ナショナルセキュリティ・サービスの強化と人材育成:
政府のサイバー防衛能力強化の方針を背景に、安全保障関連のセキュリティ・サービス需要は大幅に増加しています。これに対応するため、

  • セキュリティ・エンジニアの採用強化と待遇改善: 新卒採用枠を大幅に拡大し(25年4月入社21名予定)、給与水準も向上。
  • プロジェクトマネジメント人材の育成・採用: 大規模・長期案件に対応できる体制を構築。
  • FFRI yaraiシリーズの販売強化: 戦略的販売パートナーとの連携とOEM販売の推進、純国産製品の強みを活かした官公庁・重要インフラへの展開、新規パートナー獲得を目指します。

3. 中期経営計画 数値目標(修正後計画より)

年度売上高営業利益経常利益当期純利益
2026年3月期 (予想)42.6億円9.14億円9.64億円7.15億円
2027年3月期 (計画)50.73億円11.12億円11.63億円8.43億円
2028年3月期 (計画)59.66億円13.86億円14.36億円10.33億円
株式会社FFRIセキュリティ 2025年3月期 決算短信補足説明資料

この計画は、ナショナルセキュリティ・サービスを中核に、継続的な技術開発投資と人材獲得によって、今後3年間で売上高約2倍、営業利益1.7倍という野心的な成長を目指すものです。

まとめ:国のサイバーセキュリティ強化を担う成長企業

FFRIセキュリティは、目覚ましい業績成長を遂げるとともに、日本のサイバーセキュリティ能力向上という国家的課題に真正面から取り組んでいます。K Programへの参画やナショナルセキュリティ分野での実績拡大は、同社が単なるソフトウェアベンダーではなく、国策を担う重要企業へと進化していることを示唆しています。優秀な人材の獲得と育成が継続的な成長の鍵となりますが、市場の追い風と明確な成長戦略を持つ同社の今後の飛躍に大いに期待が持てます。


免責事項: 本記事は提供された情報に基づいて作成されており、投資勧誘を目的とするものではありません。投資に関する決定はご自身の判断において行うようお願いいたします。また、将来の見通しに関する記述は、現時点での予測であり、実際の業績は様々な要因により異なる可能性があります。

出典:株式会社FFRIセキュリティ IR情報

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Dr.カブアガール
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Data Analytics Specialist
金融データ分析メディア「インベスター・ラボ」所長 兼 データアナリティクススペシャリスト。 日々変化する株式市場の海の中から、データという羅針盤を手に「隠れた成長企業」という宝の島を探し求める探求者。複雑な財務データや市場トレンドを分かりやすく紐解き、個人投資家の皆様の意思決定をサポートすることを使命に燃えている。チョコに目がない
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