銘柄分析

【企業分析】FFRIセキュリティ(3692):成長の岐路と市場の期待を徹底分析

investorlab

サイバーセキュリティ対策ソリューションを提供するFFRIセキュリティ(証券コード:3692)について、最新の決算情報と株価指標から、同社の現状と今後の展望をメディア風に解説します。


FFRIセキュリティとは? – 国産サイバーセキュリティのパイオニア

FFRIセキュリティは、「純国産」のサイバーセキュリティ技術を強みとする企業です。特に、未知の脅威や標的型攻撃に対抗するための先読み型防御技術に定評があり、官公庁や重要インフラ企業、大手企業を中心に導入実績を積み重ねています。

主な事業内容:

  • サイバーセキュリティ製品の研究・開発・販売:
    • エンドポイントセキュリティ製品「FFRI yarai」シリーズ
    • EDR(Endpoint Detection and Response)製品
  • セキュリティコンサルティングサービス
  • セキュリティ監視・運用サービス

高度化・巧妙化するサイバー攻撃に対し、独自の技術力で社会の安全・安心に貢献することを目指しています。


直近業績と来期予測:増収も利益は踊り場か?

まず、提供された決算情報を見ていきましょう。

決算期売上高(億円)経常利益(億円)最終利益(億円)1株益(円)1株配(円)発表日
2023.03 (実績)19.52.51.923.60.023/05/15
2024.03 (実績)24.55.44.354.610.024/05/14
2025.03 (会社予想)31.65.44.354.710.024/05/14

出典:Kabutan

2024年3月期は、売上高24.5億円(前期比25.6%増)、経常利益5.4億円(前期比2.16倍)、最終利益4.3億円(前期比2.26倍)と、大幅な増収増益を達成しました。1株当たり利益(EPS)も23.6円から54.6円へと大きく伸長し、初の配当10円も実施しています。サイバーセキュリティ需要の高まりを背景に、同社の製品・サービスが順調に拡大したことがうかがえます。

しかし、2025年3月期の会社予想に目を向けると、売上高は31.6億円と前期比29.0%の大幅な増収を見込むものの、経常利益・最終利益は5.4億円、4.3億円とほぼ横ばいの計画となっています。1株当たり利益(EPS)も54.7円と微増に留まる見通しです。

これは、成長のための先行投資(研究開発費や人材採用・育成費の増加)や、市場競争の激化に伴う販管費の増加などが影響している可能性があります。増収を続けながらも、利益成長が一時的に踊り場を迎える局面と言えるかもしれません。


株価指標分析:PER67倍は割高か?PEGレシオから見る成長性

現在のFFRIセキュリティの株価は、市場からどのような評価を受けているのでしょうか。提供されたPER(株価収益率)と、算出したPEGレシオ(株価収益成長率)から分析します。

  • PER:67.0倍
    現在のPERは67.0倍と、一般的な市場平均(日経平均で15倍程度、グロース市場でも30~40倍が目安とされることも)と比較して非常に高い水準です。これは、市場が同社の将来的な高い成長性に対して大きな期待を寄せていることを示唆しています。
  • 推定現在の株価
    株価 = PER × 1株益(2025.03予想)
    株価 = 67.0 × 54.7円 = 約3,664.9円
    (※これはあくまでPERと予想EPSからの理論値であり、実際の市場株価とは異なります)
  • PEGレシオの算出
    PEGレシオは、PERをEPS成長率で割ったもので、1~2倍程度が適正水準の目安とされます。数値が低いほど割安と判断されます。
    1. EPS成長率(2024.03実績→2025.03予想)の計算:
      EPS成長率 = ((54.7円 – 54.6円) / 54.6円) × 100 ≒ 0.183%
    2. PEGレシオの計算:
      PEGレシオ = PER / EPS成長率
      PEGレシオ = 67.0 / 0.183 ≒ 約366.1倍
    算出されたPEGレシオは約366.1倍と、極めて高い数値となりました。これは、2025年3月期のEPS成長率が0.183%と非常に低い(ほぼ横ばい)ことが主な要因です。
    一般的にPEGレシオが2倍を超えると割高感が意識されますが、この数値は成長鈍化を示唆するEPS予想に対して、現在の株価評価が非常に高いことを示しています。
  • 適正株価の考察
    PEGレシオの観点からは、現在の株価は「割高」と判断される水準です。ただし、これはあくまで短期的なEPS成長率に基づいた評価です。
    市場が許容するPER67.0倍という水準は、
    • 2025年3月期の一時的な利益成長の踊り場を経て、2026年3月期以降に再び高い成長軌道に戻ることを織り込んでいる
    • 同社が持つ技術力や市場での独自性、サイバーセキュリティ市場全体の成長性に対する強い期待感
      などが背景にあると考えられます。
    仮に来期予想EPS(54.7円)に対して、より保守的なPER(例えば成長企業でよく見られる30倍)を適用した場合、理論株価は 54.7円 × 30 = 1,641円となります。現在のPERがいかに高い期待に基づいているかがわかります。 「適正株価」を一概に断じることは難しいですが、現状の株価は「将来のV字回復または持続的な高成長」を強く織り込んだものと言えるでしょう。

今後の注目点と投資判断のポイント

FFRIセキュリティの今後の株価を占う上で、以下の点が注目されます。

  1. 利益成長の再加速はいつか:
    2025年3月期の利益横ばい予想が一時的なものなのか、あるいは成長鈍化の始まりなのかを見極める必要があります。会社側からの成長戦略(新製品投入、海外展開、M&Aなど)や、その進捗に関する情報開示が重要となります。
  2. 先行投資の成果:
    もし利益横ばいが研究開発費や人材投資といった先行投資によるものならば、その投資が将来の収益にどう結びつくのか、具体的な成果が示されるかがポイントです。
  3. 市場競争環境と競争優位性:
    サイバーセキュリティ市場は競争が激しい分野です。FFRIセキュリティが持つ技術的優位性やブランド力を今後も維持・強化し、市場シェアを拡大できるかが問われます。
  4. マクロ経済・市場環境:
    金利動向や景気後退懸念など、マクロ経済の変動はグロース株の評価に大きな影響を与えます。特に高PER銘柄である同社は、市場全体のセンチメントに左右されやすい点に注意が必要です。

投資家へのメッセージ:
FFRIセキュリティは、国産セキュリティ技術という強固な基盤を持つ魅力的な企業です。2024年3月期までの実績は目覚ましく、市場の期待も非常に高い状態です。しかし、来期は利益成長が一旦踊り場を迎える可能性が示唆されており、現在の高い株価評価を正当化し続けるためには、再び力強い成長ストーリーを示す必要があります。

短期的な指標では割高感も否めませんが、長期的な視点で同社の技術力と市場の成長性を信じるならば、今後のIR情報や業績動向を注意深く見守り、投資判断を行う必要があるでしょう。特に、次回の決算発表や中期経営計画などで示される将来展望が、市場の期待に応えられるかどうかが大きな分岐点となりそうです。


免責事項:
この記事は、提供された情報に基づいて作成された分析であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資の最終決定は、ご自身の判断と責任において行うようにしてください。

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Dr.カブアガール
Dr.カブアガール
Data Analytics Specialist
金融データ分析メディア「インベスター・ラボ」所長 兼 データアナリティクススペシャリスト。 日々変化する株式市場の海の中から、データという羅針盤を手に「隠れた成長企業」という宝の島を探し求める探求者。複雑な財務データや市場トレンドを分かりやすく紐解き、個人投資家の皆様の意思決定をサポートすることを使命に燃えている。チョコに目がない
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