【統計情報分析】銘柄別信用取引週末残高残高レポート (2025年5月2日申込)
はじめに
このレポートは、2025年5月2日申し込み現在の東京証券取引所における信用取引の週末残高データを基に、市場全体の傾向や注目すべき個別銘柄の動きをまとめたものです。信用取引の状況を把握することで、市場参加者のセンチメント(市場心理)や今後の株価の需給関係を読み解くヒントが得られるかもしれません。
信用取引とは?:簡単に言うと、投資家が証券会社からお金や株を借りて行う取引のことです。「信用買い」は株価が上がると予想される時に、「信用売り(空売り)」は株価が下がると予想される時に行われます。これらの残高(まだ決済されていない取引の量)は、市場の過熱感や将来の株価の動きを予測する上での一つの参考指標となります。
市場全体の信用取引残高の状況
2025年5月2日申し込み現在の全体の信用取引残高の概要は以下の通りです。
市場区分 | 売残高 (株) | 前週からの変化 (株) | 買残高 (株) | 前週からの変化 (株) |
---|---|---|---|---|
プライム市場 | 270,842,300 | +7,332,900 | 1,401,346,100 | +19,832,500 |
スタンダード市場 | 24,640,500 | +2,817,500 | 197,429,200 | +11,429,216 |
グロース市場 | 23,284,000 | +2,030,100 | 182,023,800 | +2,041,000 |
株式市場 合計 | 318,766,800 | +12,180,500 | 1,780,799,100 | +33,302,716 |
投信等 | 15,152,925 | +1,096,761 | 113,389,510 | ▲2,883,375 |
総合計 | 333,770,325 | +5,544,361 | 1,988,973,710 | +18,731,275 |
(注1) 「株式市場 合計」は、プライム、スタンダード、グロース市場の単純合計値です。
(注2) 「総合計」は、上記に加えて投信等の残高を含んだ数値です。(表とデータから総合計の売残高・買残高はプライム、スタンダード、グロース市場の他に「投信等 Investment trusts」と「その他 other issues」の合計と思われます。レポートの主眼は株式であるため、主に株式市場の合計値に着目します。)
(注3) 「前週からの変化」は元データの前週比を参照しています。
全体の傾向考察:
- 株式市場全体では、売残高・買残高ともに前週から増加しています。
- 売残高は約1,218万株の増加。
- 買残高は約3,330万株の増加。
- 買残高の増加幅が売残高の増加幅を上回っており、買い意欲がやや優勢だった可能性があります。これは、市場参加者が先行きに対してやや強気な見方をしていることを示唆しているかもしれません。
- 各市場区分別に見ると、プライム市場が売残高・買残高ともに最も大きく、変化額も最大です。
- グロース市場は、残高自体は小さいものの、買残高の増加が目立ちます。
信用倍率(買残高 ÷ 売残高)を株式市場合計で概算すると、
2025年5月2日申込現在:約17.8億株 ÷ 約3.19億株 ≒ 5.58倍
前週(変化額から逆算):買残高 約17.47億株 ÷ 売残高 約3.07億株 ≒ 5.69倍
信用倍率は若干低下していますが、依然として買い残が多い状況が続いています。
特に目立った個別銘柄の動き (2025年5月2日申込現在)
提供されたデータの中から、特に信用取引残高の動きが目立った銘柄をいくつかピックアップします。
(注:これは個別銘柄の推奨ではありません。あくまで取引残高の変動が大きかった銘柄の紹介です。)
銘柄コード | 銘柄名 | 市場 | 買残高 (株) | 買残高 前週比(株) | 売残高 (株) | 売残高 前週比(株) | 注目ポイント |
---|---|---|---|---|---|---|---|
16050 | INPEX 普通株式 | プライム | 4,872,000 | ▲340,100 | 556,100 | +84,900 | 買残高が非常に大きい水準で、前週から減少。一方、売残高は増加。資源価格の変動や地政学リスクなどに関心が集まっている可能性があります。 |
24320 | ディー・エヌ・エー 普通株式 | プライム | 10,061,300 | +479,000 | 2,642,300 | +319,800 | 売残高・買残高ともに非常に大きく増加。何か新しい材料やイベントへの期待感が高まっているか、需給相場化している可能性があります。 |
17660 | 東建コーポレーション 普通株式 | プライム | 12,500 | ▲5,100 | 26,300 | ▲433,300 | 売残高が前週比で大幅に減少しています。これは、空売りポジションの買い戻しが進んだことを示唆している可能性があります。背景には、株価の反発期待や業績改善期待などが考えられます。 |
21980 | アイ・ケイ・ケイホールディングス 普通株式 | プライム | 55,400 | +15,200 | 104,100 | ▲344,500 | こちらも売残高が大幅に減少。買残高は増加しており、投資家のセンチメントが改善している可能性があります。 |
40530 | Sun Asterisk 普通株式 | グロース | 1,512,600 | ▲45,500 | 363,900 | +5,700 | グロース市場の銘柄で、買残高が高水準です。前週からは減少していますが、依然として買い意欲の高さが伺えます。 |
87890 | フィンテック グローバル 普通株式 | スタンダード | 6,875,500 | +367,300 | 87,200 | +4,000 | スタンダード市場で圧倒的な買残高を誇り、さらに増加しています。テーマ性のある銘柄などで、個人投資家の関心が非常に高い状態が続いていると考えられます。 |
93990 | ビート・ホールディングス・リミテッド 普通株式 | スタンダード | 9,190,700 | ▲80,300 | 1,028,100 | ▲932,100 | スタンダード市場でこちらも買残高が巨大ですが、売残高も非常に大きく減少しています。投機的な動きが活発で、ボラティリティ(価格変動)の高い展開が予想される銘柄の一つと言えるかもしれません。 |
今後の投資方針に参考となる考察
信用取引残高の見方:
- 信用買い残の増加: 将来の株価上昇を見込む投資家が多いことを示す一方で、将来的にこれらの買いポジションが決済される際には売り圧力となる可能性があります。特に、短期間で急増した場合は、相場の過熱感を示すサインともなり得ます。
- 信用売り残の増加: 将来の株価下落を見込む投資家が多いことを示します。しかし、株価が上昇した場合などには、これらの売りポジションを買い戻す動き(踏み上げ)が起こり、さらなる株価上昇の要因となることもあります。
- 信用倍率: 買残高を売残高で割ったもので、一般的に1倍以上であれば買い方が優勢、1倍以下であれば売り方が優勢とされます。ただし、極端に高い倍率(例:10倍以上)は、将来の売り圧力への警戒が必要となる場合もあります。
今回のデータからの考察:
- 全体として買い残高が増加しており、市場参加者の一定の強気姿勢が伺えます。ただし、信用倍率が若干低下している点は、過度な楽観ムードではない可能性も示唆しています。
- 個別銘柄では、ディー・エヌ・エーのように売買ともに活発化している銘柄や、フィンテック グローバルのように特定の銘柄に買いが集中しているケースが見られます。これらの銘柄は、引き続き市場の注目を集めそうです。
- 東建コーポレーションやアイ・ケイ・ケイホールディングスのように売残高が大きく減少した銘柄は、売り方の買い戻しが一巡したのか、あるいはまだ続くのか、今後の株価動向と合わせて見ていく必要があります。
初心者の方へのアドバイス:
- 信用取引残高は、あくまで市場の一側面を示すデータです。これだけで投資判断をすることは避け、企業の業績、財務状況、市場全体のトレンドなど、様々な情報を総合的に判断することが大切です。
- 特に信用買い残が多い銘柄は、将来的に株価が下落した際に、投げ売り(損失覚悟の売り)が出やすい傾向があるため注意が必要です。
- 信用売り残が多い銘柄は、何らかの悪材料を織り込んでいる可能性がありますが、逆に材料出尽くしや好材料が出た場合に、買い戻しによる急騰(踏み上げ相場)が起こることもあります。
おわりに
今回のレポートが、皆様の投資判断の一助となれば幸いです。市場の状況は常に変化しますので、最新の情報をご確認いただき、ご自身の判断と責任において投資を行ってください。
免責事項: 本レポートは、提供されたデータに基づいて作成されたものであり、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。また、本レポートは特定の金融商品の売買を推奨するものではなく、投資助言を目的としたものでもありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。